地球元気村

トップページ > 地球元気村通信 Vol.84

前に戻る次に進む
  • 西川昌徳の北米自転車冒険記

  • 西川 昌徳 Masanori Nishikawa

    「冒険×教育」をテーマに、ミニマムなバイクパッキングスタイルで世界を走り続ける自転車旅人。世界27カ国80,300kmを走破。旅先と日本の教室をテレビ電話でつなぐLIVE授業を全国の小学校で実施中。福島県特別非常勤講師。福島県新地町ICT活用協議会アドバイザー。2014年ファウストアドベンチャーズAG社会貢献活動賞受賞。

    西川 昌徳 Masanori Nishikawa

  • カナディアンロッキーの トレイルでキャンプ

    「シュッ!」という何かが切り裂かれる音で夜中に飛び起きた。
    テントの天井があるはずのところに、夜空とふたりの人影がある。「まさか、切り裂かれた」状況を判断する余裕もなく、気づけば僕は男たちに殴られはじめていた。
    思えば今回の旅のテーマは「もう一度生きることに向き合う」だった。年続けてきた僕の原点回帰。まさかそれが現実になろうとは。カナダ東海岸からスタートするはずだった自転車旅は、日目にしていきなりアメリカ入国拒否。イランの滞在歴が引っかかり、別室に送られ尋問。カナダのアメリカ大使館でなんとかVISAを取得し、挑んだアメリカロッキー山脈をたどるグレイトディバイドトレイルでは、まさかの不運とパンクが重なり走行不能に。次の町まで120kmを残し、走れなくなった。グランドキャニオンでは、夜に鉄砲水に打たれてテントごと濁流に飲み込まれ、命からがら逃げ出した。そして、旅の最後に待っていたのがメキシコでの強盗事件だった。僕を殴る男たちから必死に身を守りながらも、どこか冷静な自分がいる。片方の男は銃を構えている。僕を殴る男は、殴りながら僕の荷物を次々とテントから引っ張り出していく。分ほどが経過し、どうしても僕の自転車の鍵が見つけられない強盗たちが真っ暗な砂浜を北に向かって走り始めた。もちろん追いかけるはずがない。このタイミングで逃げなければ。火事場の馬鹿力というのは、実在する。テントのループごとワイヤー錠を引きちぎり、自転車を担いで僕は砂浜を逆方向に駆ける。町に出て助けを呼ばなければ。最初に見つけたガソリンスタンドで運良く夜中に人がいた。そして警察を呼んでもらい命は助かった。
    しかし、もう一円のお金もパスポートもない。僕はメキシコという国で「何者」でもなくなってしまったのだ。固く冷たい警察署の床で横になるも、眠れるはずがない。頭の半分は後悔がグルグルし、もう半分には自分が講師をする小学校の子どもたちの顔が浮かぶ。今帰ったら子どもたちにとって世界は間違いなく「怖いところ」で終わってしまう。僕がこの数年間取り組んできた、世界と日本の教室をつなぐ授業で伝えてきたものはおそらく今回の事件ですべて上書きされてしまうだろう...。とりあえず朝まで待って、大使館に連絡を。まさか翌朝いちばんに連絡した日本大使館からあんな答えが返ってくるとは思いもしなかった...。(続く
    キャニオンランズナショナルパークの峠道
    カナディアンロッキーのトレイルでキャンプ

前に戻る次に進む

バックナンバー

  • バックナンバー vol.93
  • バックナンバー vol.92
  • バックナンバー vol.91
  • バックナンバー vol.90
  • バックナンバー vol.89
  • バックナンバー vol.88
  • バックナンバー vol.87
  • バックナンバー vol.86
  • バックナンバー vol.85
  • バックナンバー vol.84
  • バックナンバー vol.83
  • バックナンバー vol,82
  • バックナンバー vol.81